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仙台高等裁判所 昭和40年(く)6号 決定 1965年3月23日

少年 W・K(昭二七・八・一四生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件申立の趣意の要旨は、福島家庭裁判所平支部は、少年に対する同庁昭和四〇年(少)第一〇六号虞犯(要強制措置)保護事件につき、「この事件を福島県平児童相談所長に送致する。少年に対しては昭和四〇年三月九日から向う二年を限度として、その行動の自由を制限する制限的措置をとることができる。」旨の決定をなしたが、本件については、親権者W・A子が従来職業を有し、少年の監護教育に継けるところがあつたことが、少年の非行の重大原因であり、親権者としては右原因を痛感し、若し少年を家庭に帰す旨の決定があれば、即日現在の職を辞し、少年の監護教育に専心することに決し、その旨裁判所にも申し出ていたものである。従つて二年間の長期にわたり少年を強制的に収容することは、必要な措置と思われないのであつて、該決定は不服につき抗告の申立に及ぶというにある。

しかし本件保護事件は、福島県平児童相談所長が児童福祉法に基づき少年を児童福祉施設に入所させるにあたり、少年の行動の自由を制限する強制措置を必要とするため、家庭裁判所の許可を求める趣旨のもとに右事件を原裁判所に送致したものであり、原裁判所は調査の結果、少年に対し児童福祉法に基づく保護措置を講ずるにあたり右強制措置を必要と認めて、少年法第一八条第二項により所論のような決定をなしたものであることは、本件保護事件記録および少年調査記録により認められる。従つて右決定は少年法第二四条第一項に規定する保護処分にあたらないから、所論のように不服があるとしても、抗告できないことは同法第三二条の規定に徴し明らかであり、少年法にも右決定に対し不服の申立を許す規定は全くないのである。してみると、本件抗告は不適法であるから、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 細野幸雄 裁判官 畠沢喜一 裁判官 寺島常久)

参考

原審決定(福島家裁平支部 昭四〇(少)一〇六号 昭四〇・三・九決定)

主文

この事件を福島県平児童相談所長に送致する。

少年に対しては昭和四〇年三月九日から向う二年を限度として、その行動の自由を制限する強制的措置をとることができる。

理由

少年は小学校低学年の頃から、徐々に怠学・粗暴性を表わし、表沙汰にならない程度の窃盗等の非行もあつたが、長ずるに及びその非行は顕著となり、昭和三九年六月頃から昭和四〇年一月頃までの間、内郷・平両市内の各所において他人のトランジスターラジオ・原動機付自転車・衣類等を窃取し、他面学校内においても同級の児童に対し焼きごてをあて、或は化学薬品を嘗めさせて傷害を加える等その非行はもはや放任を許さない状態にまで発展した。このことあるを憂慮し、前に福島県平児童相談所は警察官からの通告により昭和三九年九月一日より社会福祉主事の指導に付すると共に、同年九月一五日には少年の行動観察と短期治療を目的として同相談所において一時保護措置を執つたが、少年はこれに服せず毎日のように逃走し、一度は寝巻のまま無銭でバスに乗り、下車の際車掌から咎められるとその手に咬みついて逃走した。このように尋常一様の措置では指導目的を達することができず困惑していた折柄、保護者の懇請もあつて同年九月一九日一時保護措置を解除したが、少年の非行は一向に衰えず、いよいよ悪質にして危険の度を増し、少しも指導効果がみられないため、昭和四〇年二月一五日福島県平児童相談所長より、少年の行動を制限するための強制措置を必要とするとして本件の送致がなされた。

当裁判所の調査の結果、少年の非行が顕著になつたのはここ一年足らずの間であるが、その萠芽は既に幼年の頃から発し、精神の不安定・気分の易変性はかなり高度で、極めて落着きなく、すぐ飽きを生じ、一か所に留まることが出来ず、放浪・徘徊延いて窃盗その他の非行を繰り返えし、これが固定化される危険が大きいものと考えられる。少年の家庭は共稼ぎで、実父(事実上)は酒乱傾向を有し厳罰主義と粗暴な人柄であり、実母は盲目的な甘やかしの態度から、少年のかくれた真の理解できない少年に対する監護能力は極めて不充分と想われる。

以上諸般の事情を総合すると、少年に対し矯正教育の目的を達するためには少年を強制措置を採り得る教護院に収容し、適時その行動の自由を制限するのも止むを得ないと認められ且つその措置を採り得る期間は本決定の日から二年間が相当であると思料する。よつて少年法第一八条第二項により主文のとおり決定する。

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